オードリー春日さんの動画に度肝を抜かれた件について

超絶人気お笑いコンビであるオードリーのボケ担当、春日俊彰さんが主人公であるYouTubeの動画に度肝を抜かれたので紹介したい。

 

恐らく違法アップロードのものなので褒められたものではないのだろうが、それが念頭から吹き飛ばされるほど内容がとてつもなく精錬され、完成されていた。

 

題名は「オードリー春日 ヤシの実を奪って海へ逃走する」。

youtu.be

 

そもそも動画の題名から圧倒的な完成度の高さが伺える。

「オードリー春日」以降の文章の意味がまるで分からない。いや、意味は分かるんだけれども、意味が分からない。状況が分からんすぎる。だがしかし、面白い事だけは分かる。タイトルだけで動画を再生せずともそれが面白いことが分かるということは、とんでもなく稀有である。これは別に春日氏が設定したのではなく、あくまで投稿者が付けたのだろうけれども.....

 

期待に胸を膨らませ、動画を再生すると状況が掴めてくる。とある番組において無人島生活を強いられる出演者3人のうちの一人が春日氏であり、動画の冒頭で彼は無人島から見える近くの島の海岸線に人間の存在を発見する。この対岸にいる人間は同じく無人島生活を強いられている別の出演者Kなのであるが、その存在を遠目に確認し次第、春日氏は海を「歩いて渡る」と宣言する。

 

ここまでは何の変哲もない某番組の進行である。歩いて渡る、という彼の宣言に何か不穏な響きが残るが、それはこの時点においては殆ど気にならなかった。

 

その後、春日氏が反対の島へ偵察に向かうという旨のナレーションが入り、画は対岸の島にいた出演者Kからのカメラ映像に移った。「何かくる、怖い」というKのセリフの後にカメラが海を写すと、そこには物凄い速度でバタフライを披露しながら近付いてくる氏の姿があった。このバタフライというのが、そもそも芸術点が高かった。

「海を歩いて渡る」と宣言した大男が数秒後の画で水飛沫を上げながら、恐ろしくも美しく、また豪傑なバタフライをかましているのである。

同時にまた、猛スピードで水を掻き分け突進してくる大男を見て思わず背を向け逃げ出す出演者K。そして砂に足をとられてコケるその行動も春日氏の行動の異常さ、力強さに拍車をかけており、実に素晴らしいものだった。

 

場面は移り、対岸についたバケモノ、春日氏は出演者Kからこんな話題を振られる。

「方角のNだとかWが、東西南北どれに相当するかが分からない。ちょうど水分補給のために半分ほど皮を剥がしたヤシの実があるから、教えてくれたらそれをあげよう。」

(......激しくツッコミをかましたいところではあるが、本題から逸れてしまうので今日のところは勘弁しておいてあげましょう。)

実際にヤシの実を手に取り、中にジュースが含まれていることを確認した春日氏はこう返答した。

「教えますよ。北がNORTH、南がSOUTH、東がトゥースです。」

こう返答すると彼はヤシの実を抱えたまま猛然と海へ向かってダッシュしその自慢の泳力でもって急いで自分が元いた島へ逃走する。島に辿り着くと彼は勝ち誇ったようにカメラに向かってヤシの実片手にmost muscular poseを披露してのけた。

彼はこの場面においてはお笑い芸人というよりは卑劣な盗賊であった。自らの鉄板芸をかまし、相手を油断させての逃走。お笑い芸人としての豊富な経験をふんだんに活かした人間の隙をつく作戦を取り入れた盗賊行為は、正に春日氏にとってしか為し得ない離れ業であり、鍛錬された彼の真骨頂を見せつけられた気分になった。

 

と、ここでタイトルが回収された。春日氏の人でなしな行動とともに、動画再生以前は理解不能だった場面設定も完全に理解できたであろう。

「東がトゥースです。」

この発言の後に一目散に海へと逃げ出す春日氏。ただただ美しい流れであった。芸術の域を悠に凌駕してしまっていた。バタフライの時点でピークを迎えていたように思われた場面は留まることを知らず、どこまでも昇華していた。

同時に、これによって、陸上でボケをかまし、水域へと爆走する春日氏を観測することで、氏の本当の住処が海域であることはこれで疑う余地もなくなったのである

 

彼の躍進はもはや誰にも止められるものではなかった。その後の行動も常軌をまるで逸していた。

彼は出演者Kが手持ちの防災器具を駆使しても一向に開けることが叶わなかったヤシの実を、その握力のみでもって千切り割いてしまったのである。さらに、勢い止まらぬ彼の続く言葉は以下の通りであった。

「向こう向いて飲もう。」

あろうことか、彼はそのヤシの実がもたらす恩恵を、元の持ち主である出演者Kの方角を向いて飲み始めた。美しく、憎めぬ笑顔を添えて。

 

とてつもない畜生を発見してしまった、と思った。彼の行動は地獄に住う閻魔大王でさえも裁き切れない醜行であった。しかし、と同時に私は笑っていた。それも、月並みであるが、腹がよじれるほどに。爆笑していた。

 

まさか現代のバラエティーでここまで人道から外れた人間を観測できるとは思っていなかった。しかも春日氏はこれを「お笑いの範疇で」やってのけたのであった。氏は動画の中で1度しかボケていなかったものの、この非行を全て笑いにしてしまったという点で明らかに完成されていたのだった。

 

ふとタイトルに釣られて拝聴した動画にここまでの物語が含まれているとは到底考えてもみなかったため、ガードが下がり、とてつもない威力の右ストレートをまともに浴びてしまった。

次からはもっと構えて、YouTubeの海賊動画にも真摯に挑みたいと感じた。テレビ、もっと観ます。

 

 

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